ワン・イヤー・イン・ナミビア -365日のブログ-

2016年1月1日、人生初となる1年間まるまるナミビア暮らしが始まった。アフリカ大陸で過ごす1年間。青年海外協力隊としての活動や、今の自分を記録に残していくための1年間限定ブログ。

言いたい事も言えないこんな世の中じゃ POISON 【前編】

2016年11月12日、天気晴れ。

 

全てから解放されて一日中のんびりと過ごした本日土曜日。今年度の学習指導も一応全て終えたのでもう本当に一年間が終わった感でいっぱいなんですが、あと4日。今週末はゆっくり休養して最後の一週間に臨みたいと思います。

 

それでは本日は木曜日にビジターの方々に向けて発表したプレゼンの内容をご紹介したいと思います。

 

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今回のプレゼンには特にこれを発表しなくてはならない!というコンセプトのようなものが無く、Mr.ゲンダさんからの「プレゼンよろしく!」という指示だけだったのでまずは何を伝えようかなぁというテーマ決めからスタートしました。ナミビア教育委員会の方々に聞いてほしいことは何か。自分が伝えられることは何かと考えて思いついたのが「子どもたちのやる気を引き出す」という観点からの授業提案でした。なのでタイトルはこんな感じに。

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「やる気を引き出す」ということを日本ではこんな風に表現しますよという最初のイントロ。「いい教師は子どもの心に火をつける」。そういえば数年前の小学校の恩師からの年賀状にこのフレーズが書かれていたなぁなんて思い出しながらこの言葉の意味を説明しました。ちなみに英語ではこの表現は非常に奇妙です。

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さぁ本題はここから。まずはナミビアで求められる教育とは!?ということで極論をドン!子どもの成績を伸ばす授業!!これは日本人からすると「それだけじゃないでしょー!!?」なんて突っ込まれること間違いなしなんですが、ナミビアではこれが全てです。もっと言えば点数が全て。はじめは自分もこのナミビアの教育の在り方に疑問をもっていましたが、今は何の違和感もありません。子どもたちの未来のためには成績と点数が絶対に必要なんです。

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しかしナミビアの教育が抱える二大問題が子どもの成績の向上を難しくしていますよと。一つ目は「英語力の低さ」。左はグレード5の子どもたちが理科学習でおさえなくてはいけない言葉のほんの一例、右はグレード6が苦戦する算数の文章問題の例です。理科や算数の知識を英語でインプットし、学んだことを英語でアウトプットするという作業は子どもたちには至難の技。しかし成績を伸ばすためには避けては通れないわけです。

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英語ができないことが学習理解の妨げになり、それがやる気の低下につながっていますよという図です。

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そして二つ目は「学習が定着していない」ということ。算数のかけ算を例に説明しました。今年受け持ったグレード6のかけ算学習では4桁×2桁までを指導することとなっています。その指導が可能なのはグレード4(3桁×1桁)とグレード5(3桁×2桁)の積み重ねてきた知識があるからこそ。もちろんその下にはジュニアプライマリー(グレード1〜3)の基礎的なベースが。そしてグレード7でプライマリースクール(小学校段階)の知識の土台が完成!ここまでに培ったかけ算の知識があるからこそ、その次のグレード8から12まで(セカンダリースクール)がさらなる知識を積み重ねることができる!という図です。今年の1月、グレード6の子たちの中には1桁×1桁ができなかった子が約半分。この状況で4桁×2桁を指導することは不可能であること、そして学習の積み重ねの重要性をまずは理解してもらいました。

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ファンデーション(地盤)が無ければ当然学習が理解できるはずもなく、面白くない授業をノルマのようにこなす中でやる気が起こることもないという図です。

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子どもたちの英語力は低く、さらには学習の地盤が脆い状況の中、いったい何ができるのか。ここから自分の取り組んできたことを例に挙げながら個人的見解をブワーッと述べさせてもらいました。

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英語力が低いことに対して自分が意識して取り組んできたことはこの3つです。

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一つ目「シンプルな言葉をつかう」。とにかくナミビアの教科書は一つのことを教える際の情報量が多すぎます。使われている英語のレベルも子どもたちの英語力に適していません。なので自分はこの一年間授業中に教科書を子どもたちに読ませたことは一度もありません。その代わりに自分がいます。黒板に文字を書いたり子どもたちに何かを説明したりする際に常に意識したことは簡単な英語を使うということでした。情報量を絞って簡潔に!スッキリわかりやすくすることから始めました。

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二つ目「印象を与える」。英語で物事を暗記したり覚えたりすることは当然難しい子どもたち。そこで具体物を用いることで子どもたちの頭の中にイメージとして学習を残すことに重きを置いて学習活動を実践してきました。理科の指導ではリアルに触れる機会をとにかく大切に。

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算数の指導でも視覚的に理解できるようなツールをすすんで取り入れました。たくさんの新しい英単語が飛び交うわけですが、それと具体物をリンクさせることで少しでも印象に残せたらなと。そして、たとえ今は理解ができなくても、彼らが今後学習をすすめていく中で「あの時のあれだ!!」というように頭の片隅に残った印象がいつかつながってくれることにも期待ができるかなと。

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そして最後の三つ目「繰り返す」。三学期、グレード5の人体に関する学習の指導を例にして説明をしました。とにかく暗記するべき言葉の数が多いこの単元に対してどんな取り組みを実践したのかを一つ一つ紹介していきました。

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まずはジェスチャーで英語と動きをつなげて覚える活動。毎回授業のはじまりにこのジェスチャーゲームを取り入れて何度も何度も繰り返しました。

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フラッシュカードも活用しました。文字で対象を理解するのに有効的で、ゲーム的な要素も加わるので一石二鳥です。人体のパーツを覚えるために作成した臓器マグネットも毎日見て並べて名前を確認することで知識定着を図りました。そして最後は人体カードゲーム。何度も遊んでいる中でいつの間にか難しい用語が自然と身についていた子どもたちの姿がありました。

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ちなみにジェスチャーやフラッシュカード、カードゲームは算数でも使えますよーというプチ情報。

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英語力の低さをどう克服するかという個人的なまとめがこちら。「シンプルな言葉をつかう」「印象を与える」「繰り返す」。そのためにこんなことを意識してみてはどうですかというメッセージを付け加えてみました。そして最後にまたこの図。英語の教師でもなく、むしろ英語が得意でもない自分が子どもたちの英語力を上げることは難しいです。が、右上の「英語の言葉を暗記させる」ことはできる!そしてそれが子どもたちに学びの楽しさを感じさせ、さらには学習意欲の向上につながるという循環を生み出すというまとめです。真ん中の数字は先日行ったトピックテストの結果です。人体のパーツの名前を全て正しく書けた子どもが117人中66人いたという事実はこの3つの取り組みの成果であると自負しています。もちろん一番頑張ったのは子どもたちですがね!

 

改めて自分のプレゼンを振り返ると反省点ばかり見つかりなんとも複雑な心境ですが、ちゃんと最後まで続けたいと思います。が、長くなってしまったので本日はここまで。続きはまた明日です!